水の澄んでいること限りなし。



うすく濃い蒼を見てこいつはきゃあきゃあと子供のように笑った。


「魚がいっぱいいるよ!」


騒ぎすぎだと怒っても、こいつは楽しそうに笑うばかりだ。


ふと右を見れば、小魚が鋭い剣のように集まって泳いでいる。
暗い中で、ただひとつ明かりを灯された水槽の中。



一匹の魚と、目が合ったような気がして、どきりと心臓が跳ねる。




「・・・・・・米井くん?」


名前を呼ばれて、はっと我に返る。
もう一度水槽の中に目を凝らしても、そこにはただ澄んだ水と、その中で泳ぐ剣だけがある。



隣のこいつは、にこにこ笑いながら、薄暗い廊下の奥、さらなる闇を指差す。


「向こうへ行こうよ、米井くん」


こいつに手を引かれるまま、大きな水槽をあとにする。





目の端で、笑うように魚の腹鰭が、薄暗い廊下の中唯一明るい水槽の中で揺れている。