いい加減止まないかなぁ、雨。

少し散歩に行ったら、急に雨が降ってきて、慌てて木の下に駆け込んだものの、この水の滴はいつまでも降り注いでいる。

大変、もう約束の時間かな。
あの人はとっても気が短いから、あいつはどこだと怒っているだろう。

はあ、と溜息が零れた。
(あ、幸せさん、逃げないで!)

もういいかな、ずぶ濡れで帰るのもありかも。そう思って大雨の中へ足を踏み出したはずなのに、上には、さっきまで下にいた木の、濃い緑の葉が広がっていた。

いや、違う。これは・・・

「・・・遅ェぞ」

雨の日の木の葉色の傘の下で、困った様に、呆れた様に、あなたが言った。

「ごめんなさい」
笑って、傘に入る。


前言撤回。

あともう少しだけ、止まないで欲しいな、雨。



(もうひとつのおはなし)